大阪府立大 准教授
奥田浩之

みんなで一緒に自分のために

最初に白鷺団地に足を踏み入れてから、はや4年が経ちました。当時活動を共にしたメンバーは、卒業や異動でそれぞれの道を歩いていきましたが、初期メンバーと共に得た「気づき」を起点に、様々な方々のご協力を得て、ようやく最初のマイルストーンに辿り着こうとしています。

「高齢化」というテーマが語られるとき、必ず「高齢者の方々の生活や健康をどう守るか」ということが議論されますが、人生の先輩方が培ってきた知識や技術、資産や人的ネットワークを、「国全体が高齢化していくことを社会の衰退や停滞に繋げていかないために」如何にして活かしていくか…ということについてはあまり議論されないような気がします。白鷺団地で、初期メンバーと共に私が聴いた皆さんの声は「自分の持っているものを、機会さえあれば、何時でも社会のために差し出す用意はある」という力強い決意表明であり、そしてそれは、何歳になっても、「誰かの役に立つ」という人間の原初的で根源的な欲求は尽きないということを改めて認識するものでもありました。

cocoloitoが目指しているのは、上記を解決し得る「ビジネスの形」です。「ビジネスの形」とは、言い換えれば、誰かに頼ったり、もらう/あげるという原始的である意味で双方向とは言い難い配分ルールを超えた「自立モデル」であると言えます。参画された方々がcocoloitoに提供した知見や技術、資産や人的ネットワークの多寡に応じた対価を収受出来るだけの経済的価値を創出していくことが出来れば、それはひとつの新しいスタンダードに育っていけると確信しています。

社会課題の解決に「ビジネス」を持ちこむことについては、未だ抵抗感を感じる向きも少なくないと思います。しかしながら、メンバーが入れ替わりつつも持続的にプロジェクトを育てていくためにも、ビジネスの要素は必須だと考えています。

最後にもうひとつ。
私はこのプロジェクトを「社会に貢献したい」と思って始めたわけではありません。もしも何とか健康でいられたなら、あと20年もせずに私自身も「高齢者人口」に内包されることになります。そのときに、自分が稚拙ながらも培ったものが年齢に関わらず活かせ、それによって少しでも、もしかしたらたった一人の方かも知れないけれども「役に立てる」…そんな社会に生きていたいと思い、始めたものです。

売る/買う/儲けるといった交易の強みを忌避しない、公益ではなく私益として、言い換えれば「自分ごと」として捉える…そのうえで新しいスタンダードが示せれば…まだまだ長い道のりではありますが
 

cocoloito Composer

奥田浩之

大阪府立大学 21世紀科学研究機構 コミュニティデザイン研究所 准教授)

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